編集中記

 いつもは更新の後に一話分の作業を振り返って反省をするシリーズ「編集後記」ですが、今回は作業方式の変更の関わりもあって全工程終了前に一度メモ的に今回の変更事項について記しておきたいと思います。


・作業方式に係る変更

 従前、私が原稿を仕上げる場合、ネームの後の工程についても工程ごとで区切って1から終わりまで進めていく方式でした。つまり、例えば17pの原稿があったとして、ネームを17pぶん終わらせた次に行うのは鉛筆下書きを17pぶん進めることであり、それが終わったら線画ペン入れを17pぶん一気に進めるというやり方でした。
 漫画を書き始めた当初では、一話分の区切りとか更新当量目安とかの概念がなく思いついた順に5~7pくらいで書いていたのですが、これがプロットを組むことを覚えていくに従って一話の容量が10pを超えるようになり、今ではだいたい週刊連載1話ぶん(15~20弱)くらいでまとまるようになっているのですが、このページ数で上記の方式をすすめると途中で飽きが来ます。飽きるとどうなるかというと、原稿作業を止めて他のことを始め、やがて原稿のことを忘れます。これが従来繰り返されてきた更新遅延の根本原理です。
 新しい作業方式では、作業項目ごとだった作業を、ページごとに変更します(ただしネームについては従来通り一括で行います)。ネーム終了後に行うのは全ページぶんの下書きではなく、1p目の下書きです。その次に行うのは1pの線画、ハッチング、背景、トーン…と続きます。そうして1p目が終了したら、次は2p目の下書きにとりかかるというものです。
 この方式の利点はまさに作業内容が適時変わることで、飽きが来るのを防ぎます。しかしながら、この作業内容が頻繁に変わることがまたデメリットでもあります。作業項目を移る時、例えば下書きが終わって線画に移行するといった状況では、多少の頭の切り替えを要求されます。それが頻繁に来るというのは辛い時は結構つらいもので、時に手がとまったりします。ただ、慣れである程度克服できそうな感じが既にあるので大丈夫そう…だといいな?


・作画技術上の変更

 見かけ上分かる変更として、ハッチングを導入したことについてもここで書きます。以前の私の原稿では、輪郭線以外の色彩や陰影表現はすべてトーンで補っていました。これはあまり見栄えのいいものではなく、私自身ずっと悩んでいました。線の太さで最大限陰影を補ったりしてみましたが、まさか線でびっしり原稿を埋める訳にもいかず、頭を抱えていました。そこで登場するのがハッチング(網掛け)です。
 参考にしたのは宮﨑駿の風の谷のナウシカ(漫画)です。同作はトーン処理を最小限にして、基本的にはハッチングとベタ処理で人物から背景に至るまで色彩と陰影を表現しています。劇画ともちょっと違う、どちらかというと中世ヨーロッパの木版画のような質感です(その上で違和感なく見えるのは宮崎氏の技量によるところ)。ここで詳しい分析は致しませんが、基本的にはこの作風を参考に作画をしていきたいと考え現在も執筆しております。
 具体的な変更点については上げればキリがないほどで、あるいは未だ試行錯誤の状態ですので具体的にこう!とは申し上げがたい部分なのですが、まず黒髪の表現が70%のトーンからハッチング表現に変わりました。見栄えの点では未だ疑問符が浮かぶ程度ですが、表現の自由度という意味では(少なくとも変更については)満足しています。何より、ペン一本でできる表現の幅が広まったというのは純粋に嬉しいことです。


追記:

 そんなわけで一度リリースしましたが、いくつか反省点が見えてきたのでその点についても考慮します。

・ハッチングの密度
 トーンをおさえてハッチングで補ったつもりでしたが、圧倒的に白い原稿になってしまいました。つまりハッチングの密度が足りなかったわけです。また、ハッチングとベタで表すグラデーション表現も黒髪部分だけで使うと周囲が白いので浮くことがハッキリわかりました。もっと黒ベタをガンガン突っ込んでいかなきゃダメそうです(と言うか背景を描け)。追加ついでに、中記時点では仮に禁則としていたハッチングでのグラデーション表現とトーンの併用については、やったほうがよいという事がわかったのでこれも改善します。

・輪郭線のアンチエイリアス
 ラノベっぽいタイトル(笑)。どうも打ち出して縮小した原稿をブラウザで確認すると、そこまで露骨ではないにせよ若干輪郭がささくれているような印象がありました。後で再確認しましたところ、ウェブ表示状態と打ち出した直後では特に変化がなかったので、縮小の仕方が悪かったのか?とも思いましたが作業環境がSai1なので高機能なエンコーディングが出来るわけでもなく困ったなあといった具合です。とりあえずの処置として、描画時の線の品質(従前は速度最優先=荒くなる)の調整など出来る範囲でいくつか条件を変えて試験してみようと考えています。まぁすぐ終わりそうだし
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DOOM4 ストーリー類推


 先日DOOM(2016)を1年ぶりに遊びなおしました。このゲーム一部ではDOOM4と呼ばれたりDOOM(2016)と呼ばれててわかりづらいですが、DOOM4は製作途中で企画がキャンセルされた幻のアルファ版を指す場合もあるので、以下では正式名称に則ってDOOMと呼びます。シリーズの歴史とか作品の概要は各自調べてください。


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DOOM(steam)


 このDOOM、個人的には全方位でレベル高いコンテンツだと思うんですが、ネットで調べても「DOOM最新作、先祖返りでDOOM系(全方位から押しかけてくる敵を撃ちまくるゲームデザイン)に戻る」だの「頭空っぽにして銃を撃ちまくる爽快アクション」と言われたり、果ては「シリーズの伝統ですが(笑)ストーリー的な要素は皆無なので目の前の敵を倒していきましょう(笑笑)」などと書かれています。
 特に最後、これは最新作DOOMでは明確な勘違いで、ストーリーは用意されています。それもDead SpaceやCrysisといった同系シングルアクションゲームと肩を並べて追い越せるくらいには世界観から展開まで作り込まれているのですが、ストーリー展開がプレイ内容にコミットする割合を意図的に抑えて作られていることと、アクション性が強すぎて細かく見ている暇がないため普通にプレイしている限りではあまり重要ではないのがこのような論説の土壌になったのではと考えています。
 そういった背景もあり、日本語インターネット圏で検索しても本作に関するシングルプレイヤーのストーリーに関する考察はおろか解説すらろくに出てきません。本稿ではこの、光の差し込まない「アクションゲームのストーリー要素」について本編中の文献資料などを元に世界観などを確認していきたいと思います。



時代設定:

 劇中の年代は作中の記述から2145年(もしくはその数年後)と思われます。ハイデン博士の言によれば、この頃の地球は深刻なエネルギー危機の瀕しており、地獄の開拓とそれによって得られるエネルギーはその危険性を考慮しても不可欠であるとのこと。以下、コーデックスの記述を参考に年表を。

2095年:火星の地表でアージャントの裂け目(次元を超えて移動する、精製されていないアージャントプラズマの流れ)が発見される。
(注釈:アージャントUrgentとは差し迫った・緊急のという意味。プラズマは高エネルギー状態の物質が電離した状態で、アージャントプラズマは重金属の同位体元素ととれるような記述がなされています。また、アージャントエネルギーは一箇所に大量に集まるだけで大小の異次元ポータルを開いてしまう性質が示されていますので、この頃からデーモンとの遭遇はあった可能性があります:注釈おわり)

2096年:UACによりアージャントプラズマを採集・精製することでエネルギー源として利用することが計画され、それらの施設(アージャント施設)を建設・運用する人員が居住するための大規模な移住計画、それに伴う火星のテラフォーミングが始まる。年内には小規模なアージャント精製基地が完成している。

2130年前後:火星のテラフォーミングが完了(時期推定)

2145年:ラザロ計画有人調査によりカディンガー至聖所(注釈:至聖所とは宗教施設において最奥にある、最も神聖とされる部屋のこと。この場合は巨大な神殿群を指しており、ざっくりと聖地とかのほうが妥当かもしれない:注釈おわり)が調査され、大量の碑文・文献資料とともにドゥームマリーンと名付けられた人間が入った石棺とプラエトルスーツが回収される。ただしデーモンたちの激しい抵抗に遭ったことで調査隊はハイデン博士を除き全滅。

ゲーム開始直前:オリビア・ピアス博士と彼女の教団によって、ラザロ計画で火星に捕獲収容されていたデーモンたちが放たれ、UAC職員(総勢61000人強)は最高責任者のサミュエル・ハイデン博士とピアス博士を残して全滅する。デーモンたちは職員の遺体を使って「ゴアネスト(アージャントエネルギーに依存しない小さなポータル)」を作り、各所で無尽蔵にデーモンを呼び寄せていた。その頃、ラザロ計画によって火星に持ち帰られた後に行方不明になっていたドゥームマリーンの棺が開かれ(誰によって)主人公が目を覚ます。

ゲーム開始後:主人公ドゥームマリーンによって火星に展開したデーモンの多くは駆逐され、デーモン軍団の火星侵攻の地球側協力者だったピアスも死亡し、ポータルも完全に閉じる。さらに火星にあったアージャントプラズマ精製施設もドゥームマリーンの手によって完全に破壊され、人類が地獄に接触する手段は(当面の間は)絶たれる。詳細は遊んで確かめてほしい。



登場人物、用語:

・ドゥームマリーン(主人公)
 主人公。プレイヤーキャラクターでありプラエトルスーツというスパルタンのような未来チックアーマーに身を包んでデーモンを殺しまくる。人間であることが明示されているが、実は作中で一番重要な地獄の遺物。その正体はUACとハイデン博士によって行われた「ラザロ計画有人調査(おそらく2145年)」によって地獄から持ち帰られた石棺の中で眠っていた一人の人間であり、地獄の第一期に復讐に目覚め、デーモンたちを相手に殺戮の限りを尽くし恐れられたドゥームスレイヤー本人である。彼はデーモン(闇の軍団)とデーモンに関わるものすべてを憎悪しており、その怒りはハイデン博士の作り上げたヘルエネルギー(アージャントプラズマ)を回収するシステムにも向けられる。

・サミュエル=ハイデン博士
 火星でのUACの活動の責任者であり、アージャントの裂け目で発見されたプラズマ、もとい地獄を人類のエネルギー源として利用するという狂気を実現させてしまった男。アージャント施設で精製されたエネルギーを地球に送り届ける施設である「アージャントタワー」建設中に脳腫瘍で余命わずかであったことが発覚したが(この時点で100歳近い!)、数ヶ月で自分の脳の移転不能な部分を機械で置換し体も機械に置き換えることでサイボーグとして病を乗り越える。新しい体は身長3mを超える巨体で、主人公よりよっぽど強そう。ラザロ有人調査計画では十数人の完全武装した調査隊員が次々とデーモンの餌食になるなか彼一人だけ生きて帰還している。
 人類の存続には地獄の開拓とエネルギー採取が不可欠と考えており、ドゥームマリーンにアージャント施設を破壊された後も、主人公から地獄の遺物であるクルーシブルを奪って再起を図ろうとする。なおゲーム開始時で130数歳だそうで、逆算するとおおよそ本作発売時期(西暦2010年代なかごろ)に生まれたことになる。

・オリビア=ピアス博士
 本作の悪役。火星のUAC施設で研究用に捕獲されていたデーモンたちを解き放ち、アージャントタワーをポータルに変えてデーモンたちの火星侵攻を助けた。UAC研究者として火星に来る少し前からデーモン軍団の領主である闇の主に心をとらわれており、自らを永遠に生きる地獄の女帝にしてもらう対価としてデーモンの火星侵攻に協力した。が、闇の主が最も恐れるドゥームスレイヤーの復活は阻止できなかった。最期は契約の対価をデーモン流で受け取ることになり、ドゥームスレイヤーに倒された。

・VEGA
 AI。状況説明担当。特にこれといって役割はないが、まともな人間の出てこない本作の唯一の良心。後悔はたくさんあります。

・UAC
 作中の世界で最も影響力があると言われている企業。火星のアージャント施設運営を行っているほか、さらに遠くの惑星にも前進基地を持っているとの記述もある。コーデックスの記述のほか、アージャント施設の随所でみられるホログラムのプロパガンダ放送が徹底的な科学万能主義と人名軽視の企業体質を物語っている。ティア(職員の階級)が進むにつれ職員向けの資料に地獄に関する記述が増えていき、もはや科学ではなく闇の主の信奉者の集団でしかないことが描かれる(というかその案内文書を書いていたのがピアスだと最期に分かる)。誰が火星まできてこんな企業で働きたいと思うんだと思いそうなものだが、さわりだけ見れば最近の先進ベンチャー企業のような雰囲気である。



 地獄の考察:


・地獄
 本作がただの未来SFでおさまらなかった理由。火星の基地やテラフォーミングなどが登場する世界観において古典的な宗教観に基づく存在である地獄が「科学的に分析」されたうえ「エネルギー源として利用」されるという設定には目眩にも似た感動がある。
 ただし、本作における地獄は各宗教で言われるような悪人の行く場所ではなく、どちらかと言うと未知のエネルギーが循環している別次元の空間という感じである。とはいえどう見ても悪魔そのものの生物が跋扈し、人の絶えた遺跡や平原には人間の骸骨や血肉が山と転がっているビジュアルはどう見ても地獄であるから、作中登場人物も宗教的解釈の地獄として扱っている。
 本作の随所で語られるドゥームスレイヤーの前史や地獄の世界観などは、ゲームのストーリーに関わる内容であるにも関わらず”文献が断片的に引用されるだけ”の説明であり微妙に判然としない。ドキュメントをどっさり用意しても軽快なプレイを妨げるため絞れるだけ絞ったということなのだろう。以下ではゲーム内資料から分かる地獄での出来事をまとめる。

・アージャント=ドヌールをめぐる戦い
 本ゲームの最終ステージであるアージャント・ドヌールは、今は地獄の次元にある巨大な廃墟群だがかつては人間の暮らす街だったと記述されている。デーモンに制圧される以前のドヌールがどの次元に存在したかは劇中でも判然としないが、おおよそ古代地中海や古代イスラエルの都市国家のような形態のコミュニティだったのではないかと思われる。
 この街はデーモンの侵攻をうける以前から強力な闇魔術に関わるテクノロジーを保有しており、その源になっていたのが「エレメンタル・レイス」だった。レイスは強力なエネルギーを放ち続ける怪物(デーモンではない)であり、ドヌールの人々はレイスの恩恵を受けつつレイスを恐れ敬っていた。劇中に何度も幻影として登場する十字軍騎士のようなバケツヘルメットを被った戦士は、デーモンに滅ぼされる以前のドヌールをデーモンとレイスの両方から守護していた戦士司祭「ナイトセンチネル」である。というかナイトセンチネルのスーツも2140年代のテクノロジーとそう変わらないハイテクそうな外見をしているので、魔術とか関係なしにレイスのエネルギーを利用していただけかもしれない。冷酷無比のデーモン軍団をもってしても、レイスとレイスを守護するナイト・センチネルに守られたドヌールを制圧することは適わなかった。
 戦いのさなか、地獄の低位司祭ディーグ・グラブによってナイトセンチネルの一人と交渉がもたれる。戦闘中に行方不明になったセンチネルの息子の帰還と引き換えに、ドヌールを守るレイスのもとへとデーモンたちを案内するという契約だった。これによって難攻不落であったアージャント・ドヌールは陥落し、神殿は破壊されレイスはことごとくデーモンたちの手に渡った。この勝利でデーモンの得たものは大きく、レイスの放つ力を手中に納めたことで彼らの勢力は急伸することになる。また、アージャントの裂け目から漏れ出ていた未知のプラズマの正体もレイスの放つエネルギーであるとされています。
 大勢の仲間を裏切ったセンチネルは報酬として息子を受け取ったが、彼はデーモンの姿に変えられており、またセンチネル自身も裏切りの代償として苦しみを与えられた。(注釈:この辺記述が曖昧なのですが、おそらくピアス博士などと同じように悪魔に約束を反故にされたうえ、拷問でもされたのだと思われます:注釈おわり)

・ドゥームスレイヤーの戦いと封印
 アージャント・ドヌール陥落と同じ地獄の第一期に起こったドゥームスレイヤーによるデーモンとの戦いは、スレイヤーテスタメントとして地獄の各地に碑文が残されている。
 「地獄の炎で二度と這い上がれぬほど魂を汚された男」があるとき立ち上がり、デーモン軍団を殺戮しながら徐々に強くなっていき、徐々に悪魔を追い詰めていった。彼に倒されたデーモンたちは彼をドゥームスレイヤーと呼び恐れた。しかし、最期には地獄の司祭の計略によって神殿ごと封印されたというのがその内容である。
 この一連の戦いは上記のドヌールをめぐる戦いとの前後が明示されていないが、仮にアージャント・ドヌール陥落が先であった場合は「地獄の炎で二度と這い上がれぬほど魂を汚された男」というのがドヌール陥落の原因を作り、悪魔に裏切られたうえ苦しみを与えられたナイトセンチネルである可能性もある。裏切り者に関する記述は「裏切りの代償として苦しみを与えられた彼の報復は迅速かつ無慈悲だった」とあり、またドゥームスレイヤーは悪魔への復讐を始めた当初から「ナイトセンチネルの王冠」を被っていると書かれており、関連性が示されている。これが真実なら謎多きドゥームスレイヤーの経歴が明らかになる。

・タイタン
 スレイヤーテスタメントの碑文に突然登場する形態のよくわからない存在がタイタンである。記述には「しかし地の底から、かつて存在した強大な力を持つ戦士、偉大なる者が立ち上がった。凶暴なタイタンだ。彼は平原を進み、ドゥームスレイヤーと対峙し、荒れ果てた平原で熾烈な戦いを繰り広げた」とある。これに従えばタイタンとは個人名のことで、デーモンかどうかは分からないが地獄の側に立って戦っていることになる。
 一般に、タイタンといえばギリシア神話に登場する古の神ティターンとその子孫一党を指す。全知全能の神ゼウスが実父クロノスと天界の主導権を巡って戦ったティタノマキアでは多くのティターンがクロノスの側につき、敗北し地底深くのタルタロスに幽閉された。彼らは巨人族であり、大きな力を持っていたとされる。
 本作における地獄やデーモン、闇の軍団の取扱を考えれば上記のギリシア神話におけるティターンがそのまま登場しているとは考えにくいが、概ね似たような立場を背負っていると考えるべきである。
 作中には「タイタンの領域」という直球な名前のステージが登場する。このステージの解説には以下のように書かれている。「最期に、諸君が経験する不思議なことに向けて準備をしておくこと。タイタンの亡骸を見れば、勇敢な支持者でも恐怖をおぼえる。運が良ければ、生きたタイタンを見ることができるかもしれない。その場合、すぐに目撃した情報を記録し、安全のためにストレージ機器を偵察ボットに渡すこと。タイタンがまだグレートステップに生息しているかは判明していない(後略)」つまりタイタン族という種族(≠デーモン)が地獄の次元に存在しており、彼らはドヌールの住民のようにデーモンに滅ぼされたかあるいはドゥームスレイヤーに滅ぼされたか分からないが、おそらく絶滅しているだろうということが分かる。特に巨人という部分を強調して考えたい。地獄の領域であるネクロポリスやタイタンの領域に転がっている遺骨や遺体はドゥームスレイヤーと比較してもかなり大きい。その身長はおよそ3mで、敵キャラクターの一つで人造デーモンであるレヴェナントもそれくらいの身長であるのは偶然ではないかもしれない。コーデックスのレヴェナントの項目には、普通の人間にアージャントエネルギーを与え続けると骨格が急成長し3m程度で止まるとある。このあたりの設定についても関連があると思われるが、手元の情報ではこれ以上推察することは難しい。

・その他の遺体
 地獄の領域の大半はおぞましい屍肉や血の池、鎧を身にまとった骸骨が転がっている。プレイヤーが最初に訪れるカディンガー至聖所の神殿にも古戦場を思わせる遺骨群がそこらじゅうに積み上がっており、地獄の雰囲気を醸成している。これらはサイズは人間であり、また持っているのは盾や剣、鎖鎧であるから中世の戦士階級を連想させる遺留品である。あるものは矢で射抜かれ、あるものは剣で串刺しにされるなど思い思いの殺され方をしているが、彼らはどこから来た誰なのだろうか。剣や鎧の意匠は古代から中世(特に中世のヨーロッパ)のものだが、紋章などの由来を示すものはない。唯一目立つのはノルウェー国旗のようなスカンジナビア十字が書き込まれた盾だが、それもどこにでもあるといえばそれまでである。
 あるいは地獄の軍団の中心的場所であるカディンガー至聖所も、元をたどればアージャント・ドヌールのようにどこか別の次元から奪われた聖地なのかもしれない。


おおよそ疑問だったところについて情報を整理してみたが、続編(あると信じる)でもない限りこれ以上情報が出て来るとも思えないので、書くだけ書いて終わりです。


追記:日本語インターネット圏にぜんぜん情報がないのでどないや!と思って描きましたが、英語のwikiがありました…早く言え…
DOOM wiki

ダンケルクを見た

クリストファー・ノーランの映画、ダンケルクを見てきましたので感想をちらっとまとめます。

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 まず、映画が扱っている出来事について軽く触れます。少し歴史か軍事に明るい人ならタイトルを聞いてピピッと来るでしょうが、本作は第二次世界大戦序盤の大作戦、ダイナモ作戦(別名ダンケルクの撤退)を描いています。
 1939年、ヒトラー率いるナチス・ドイツのポーランド侵攻に対して英仏が宣戦布告したことで正式に幕を上げた第二次世界大戦(欧州戦線)は、先の大戦と同様に独仏国境地帯を超えて殺到するドイツ軍をフランス軍が足止めし、その間に英大陸派遣軍がフランスに揚陸、準備が整ったところで英仏協働でドイツ軍を押し返す方針がとられました。フランス軍はドイツ軍に劣らない規模の機甲師団や要塞線を設置しドイツを待ち構えていましたが、戦車やトラックで機械化・機甲化され高い練度と最新鋭機を装備した空軍の手厚い援護をうけたドイツ軍の侵攻部隊を前にフランスの国境防備部隊は全くと言っていいほど機能せず、時間稼ぎは失敗。英軍の展開が不完全な状況で前線を突破され、逆に海岸地帯に押し出された英仏軍はダンケルクの海岸で完全包囲されることになります。その数実に40万人弱。この数字は(何割かはフランス兵だが)実に20個師団にも相当する規模であり、仮にこの全員がドイツ軍の捕虜になってしまった場合、英軍は圧倒的な兵員不足に陥り、来る反攻作戦はおろか本土防衛すら難渋していたでしょう。ライミー危うし!
 ところが、ダンケルクの市内と海岸に逃げ込んだ英仏軍を射程に収めようかというところでドイツ軍の進撃が停止します。この背景には作戦を立案したドイツ国防軍の参謀本部の予想をも遥かに超えるペースで電撃戦(機動戦)が成功してしまったことで、敵残存兵力に対してどう出ればいいか指揮系統に混乱が生じたこと(ヒトラーは対仏戦後の英国との停戦交渉のために残存英軍の殲滅を望んでいなかったという)、さらに計画外のスピードで長距離進軍をしたことで最前線の部隊への補給が追いつかなくなり嫌でも止まらざるを得なくなったこと(機械化部隊は弾薬食料の他に大量の燃料が不可欠)、前線の機甲部隊を指揮していた将校たちは戦闘が優位に進んだのをいいことに本国の命令を無視して勝手に進撃を続けていたが総統から待ったがかかったので停止した、などの事情があります。また風説では、ナチ党の重要幹部であり空軍を仕切っていたゲーリングに対して華を持たせるために敵残存兵力に対する攻撃を空軍に任せたというような話を私は聞いたことがありますが、いずれにしてもドイツ軍は進軍を停止し、それは失敗だったとすぐに認めることになるのです。

 といったところまでがこの映画の背景情報です。この後何が起こるかは知っている人は知っているし、知らない人も調べればすぐに分かるのですが特に書きはしません。以下、映画の感想を箇条で説明していきます。


・セリフが少ない
 マッドマックス怒りのデスロード並にセリフが少ないです。これは見てもらえれば何となく意味が分かると思います。

・時系列が不自然に組み替えられている
 何か演出意図があってのことなのか、あるいは娯楽映像作品として事実を淡々と時系列順に並べるだけではマズイと思ったのか(私は後者だと思ってます)、実際の時系列に対して映像の時系列が過剰なほどに組み替えられています。本編では全く別の3つの場面が並走しますが、それぞれの交差を上手く見せるために時間が半日戻ったり、同じ場面が何回も別角度で出たりして若干混乱します。混乱しないまでも、シーンが変わる度に「これはいつのどこだ?」と把握する作業がやや忙しいです。

・戦闘描写はすごい
 ノーラン監督はCGを使いたがらないことで有名ですが、本作も登場する兵器や艦艇を模型や再現実機(!)を飛ばして撮影したそうで、かなりの割合を占める空戦シーンは見ごたえがあります。

・ドラマはほぼない
 脚色はいっぱいあるらしいんですが、再現記録映像と言われても頷くほど話は淡々としています。「その時歴史が動いた イギリス軍大撤退作戦! ~ダンケルクの奇蹟~」とかそんなタイトルにして松平定知のナレーションつけても成立するような構成です。敵が出てきて戦って仲間を助けて~みたいなアクション映画文法では書かれていませんし、そもそも敵は出てきません。

・見応えはある
 

 といったところでしょう。シンプルな映画なのであまり書くこともないです。あと、見た次の日に書いた感想まんがもせっかくなんで載せときますね。だいたいこんな展開っていう。
ダンケルク

 あとこれ余談ですが、IMAXのシアターで見たんですけど座席が前(D列)かつ右よりで、画面デカすぎて終始右斜上を見てないと視界に画面が収まんなくて首が痛くなりました。画面デカイのも考えものだなと思いました。

なつやすみ読書感想文 イギリス外交とヴェルサイユ条約 : 条約執行をめぐる英仏対立、一九一九-一九二〇年(大久保 2012)を読んで


 こんにちは複素数です。先日25歳になりました。人生の夏休みも3年目が見えはじめ、人生が日々いっそう厳しさを増していると感じない日はありません。そこで新学期を迎えるために宿題を一つ提出することにしました。まずは読書感想文です。昔から読書感想文だけは得意でした。


1.本をえらんだりゆう

 まず題材に用いる本を選んだ理由を説明しましょう。正確に言えばこれは書籍ではなく論文ですが、内容的には簡潔で抑揚に富み娯楽文書としても十分楽しめるものでしたし、大学の論文アーカイブで誰でも閲覧できるという共有性の高さもあり選択に至りました。また「戦勝国が敗戦国に課す要求」というテーマは、第二次世界大戦によって米国の強い影響下で成立した日本国憲法体制の日本国では何をするにもついて回るものであり、現在も憲法という名の神学論争に多大な時間と労力が費やされる日本という国家にとって世俗権威や力の原理以上に重要な問題として存在しているものであります。加えて昨今の東アジアを騒がせる北朝鮮情勢についても、勝者敗者という分類こそ存在しないものの「永続服従か共存か」という最も基本的で重要な選択の存在を、戦間期ドイツの連合国との関係は思い出させてくれるのではないかと思い、ここに感想文を記述することを思いついた次第です。


イギリス外交とヴェルサイユ条約 : 条約執行をめぐる英仏対立、一九一九-一九二〇年


 題字から分かる通り本稿はヴェルサイユ条約の具体的施行の方針について、ドイツの条約履行を監督する立場であるイギリスとフランスの条約とドイツに対する方針の違いがいかにして英仏対立を誘いヴェルサイユ条約を形骸化させたかを、一連の対立が最も激化した23年のルール占領までをイギリス側の動向に注視することで明らかにするものです。高校の授業を忘れてしまった人のために補足すると、ヴェルサイユ条約とは第一次世界大戦(1914~1918)の終戦条約であり、敗戦国ドイツに再武装の禁止や膨大な賠償金支払いなどを強いるものでした。この条約による戦後処理の失敗が20年後の国家社会主義ドイツ労働者党による独裁やドイツ再武装、そして再び欧州全土を巻き込む世界大戦を招いた一因であると現在では知られており、本稿も直接的に触れこそしませんが再来する悲劇を見据えた視点で「なぜヴェルサイユ条約が破綻したか」を論じているものであります。

 そもそも私はワイマール共和国史(戦間期ドイツ史)に興味があり、主に20年代末の共和制終焉前夜からナチ党が権力を完全に掌握するまでについて時折調べたり本を読んだりしていました。なぜ興味を持ったのかについてはここでは触れません。本稿が扱うルール占領は、未だドイツ帝国の残煙香る成立間もないワイマール共和国政府がゼネスト鎮圧のためにヴェルサイユ条約が定める非武装地帯であるルール地方にドイツ国防軍を一時派遣する許可を連合国に請い、フランスがそれを激しく拒絶することから始まります。この点、つまりワイマール共和国の選択に監督者としての連合国が登場するのは、私が今まで学んできたワイマール共和国末期の歴史ではあまり無いことです。ルール占領の12年後の1936年、ヒトラー率いるドイツはルール占領の主たる舞台であり、ヴェルサイユ条約が定める非武装地帯であるラインラント地方に国防軍を公然と派遣し、ドイツの主権回復と帝国復活を国内外に広く印象づけました(ラインラント進駐)が、その時連合国はこの意図的な条約違反に対し何か言うでもなく、実質的に黙認したのです。(各国の内的な事情からそうなってしまった事例もあるが)この反応の違いは36年にはなくて24年にはあったものの差であり、即ちそれこそがヴェルサイユ条約の実行力だったのです。そう気づいた時、私はがぜん条約をそのように形骸化させてしまった原因に興味が湧きました。



2.ようやく

 本稿を要約します。稿中は時系列に沿って事細かく出来事を語られていますが、実際は一年に満たない期間の話で特に政変などもないので主要な登場国についてその立場・主張・状況について引用と私の補足を交えて記述していきます。


 ドイツ:
 ・中央同盟国の頭領であり大戦最大の敗戦国で、ヴェルサイユ条約の定める賠償その他を履行する義務を負うことになった
 ・もとはヨーロッパ全域のドイツ系住民および旧二重帝国領土に影響力を持つ中欧の盟主
 ・終戦に至るきっかけは降伏ではなく国内で発生した革命(ドイツ革命)によりドイツ皇帝が追放され、連合国と停戦した後戦闘が再開しなかったため。仏英米軍(西部戦線)はドイツ国内に達しておらず、ドイツの国土は戦禍を免れているばかりか帝国陸軍はいつでも戦闘再開できる形で残存していた(軍は後に最大限存続する形で大幅縮小された)
 ・共和制に移行したワイマール共和国期も不安定な政権ながら内情はドイツ帝国時代の政治家・官僚・軍人が多く参画しており、第二次大戦を挟んだ第三帝国とドイツ連邦のような極端で完全な政体転換はなく連続性のあるものだった
 ・ヴェルサイユ条約は特に賠償について、大戦で疲弊した国内経済や国内(政権)の不安定さを理由に減額・支払い猶予をたびたび要求しフランスと対立することになる
 ・ワイマール憲法体制は共和制であり、例えヴェルサイユ条約に抵触する内容であってもドイツ国民が反感を抱くものであれば政府も抵抗姿勢を示さざるを得なかった。
 ・戦後の混乱を背景に国内で共産主義者が勢力を伸ばしており、これはヒトラーが政権を獲得し共和制が終了する33年まで深刻な問題として継続する


 フランス:
 ・連合国筆頭、西欧の大国にしてドイツとは長年ヨーロッパ覇権を争ってきた
 ・4年続いた西部戦線は最初を除いて殆どずっとフランスが戦場になっており、戦争に勝ちはしたものの国土は荒廃し多くの人的損失を出した
 ・実は50年前の普仏戦争でもプロイセン=ドイツ軍に大敗して国土を逆侵攻されており、安全保障上の明確な脅威であるドイツをこの機会に弱体化させ、ヴェルサイユ条約と連合国の名のもとに平和主義の民主国家に作り変えようと画策する
 ・上記理由に加えて大戦の戦費をイギリスやアメリカから借り受けており、国土が荒廃し各種産業がほぼ停止しているのもあって是が非でもドイツに賠償金を支払ってもらう必要があった
 ・それらの理由から強権的な手段を用いてもドイツにヴェルサイユ条約を履行させることを望み、ドイツがヴェルサイユ条約に反してルール地方のゼネスト鎮圧のために国防軍を派遣したことを口実に、連合国会議の開催国であるイギリスの意見を無視し、同じく大戦被害国であるベルギーを伴ってドイツ工業の要でありドイツの歳入の大部分を背負っていたルール地方を占領するという暴挙に出る


 イギリス:
 ・フランスとともに連合国を会戦当初から支えた連合国であり、陰りが見え始めたものの未だ世界の海を支配する大帝国である
 ・ヨーロッパであることは間違いないが欧州で唯一他国と海で隔てられた島国であり、戦後の立場を同じくするフランスや、ドイツやロシアとも異なる外交意思決定プロセスをもつ。具体的には仏独露ら大国が覇権膨張を志す積極政策をとるのに対し、英国本国の関心は対岸(ヨーロッパ大陸)の政治的安定だけであり、戦争を回避しつつ世界中の植民地を経営し貿易で蓄財する消極政策をとる
 ・上記の政策方針からドイツに対しても非常に融和的・リベラルな戦後展望をイメージしており、ヴェルサイユ条約の履行や、あるいは賠償金支払いについてもワイマール共和国の安定存続のためなら目をつぶるべきであるとの姿勢を内閣と議会は共有する


 アメリカ:
 ・大戦終結の功労者にして連合国の資金源。
 ・ウィルソン大統領はドイツの戦後処理の展望の大部分をイギリスと共有していたが、連合国各国の戦費を工面した(ウォール街への)手前、最大のネックである賠償金問題について猶予をつけるなどという事は言えなかった
 ・ドイツのヴェルサイユ条約履行を監視し判断する連合国の意思決定の場である連合国会議から途中脱退してしまうため、その後の英仏対立の構図には参加しない


 ロシア帝国/ソ連:
 ・第一次世界大戦の後半、1917年に発生したロシア革命によりロシア帝国が崩壊し、長い内戦を経て誕生した世界初の共産主義国家
 ・ルール占領の二年前まで内戦が続いており、24年はチェーカーによる粛清の嵐が吹き荒れている頃合いだが、この時点でソビエトは連合国にとって連合国の一員であったロシア帝国を打倒した敵対勢力であり、内戦が終結した今となってはシベリア出兵の時のように攻撃を加える事こそしないが国交はなく、当然連合国会議にも席は用意されていなかった。



 欧州戦線に参加した主要な国の内情を軽くまとめるとこんな感じかと思います。崩壊寸前の国家=ドイツ人の文明の立ち枯れ・共産化を防ぐために連合軍の要求に抵抗せざるを得ないドイツ、自国の将来存亡と経済のために条約に従いドイツ弱体化させなければいけないフランス、ドイツ=中欧の安定を第一に考えることで過激な手段を用いたがるフランスに不信感を抱くイギリス。もうこれだけでどんな悲劇がこれから起こるか容易に想像できますね。そして起こったのがフランス・ベルギーのルール占領事件であり、あとに残ったのはおなじ連合国であるイギリスとフランスの深刻な対立です。かくして、プロイセン的軍国主義を封じ込め欧州に平和をもたらすはずだったヴェルサイユ条約は執行者の不在から機能不全に陥り、最悪の状態で放任されたドイツは世界を再び炎に包むことになるのです。対立に至る詳細な時系列については本稿を参照してください。

 上記の各国概説を読む、あるいは本稿を読んだ方は「あのフランスというのは、なんて偏狭で独善的なやつなんだ。きっと次の大戦で全国を占領されたのは報いに違いない」といった感想を抱くかもしれません。私はそう感じました。大戦の戦禍によって余裕を失い、またいついかなる時も真っ先にドイツ軍の被害を被る地理的要因が彼らをそのような過激な行動に駆り立てていることを加味しても、フランスに対する一種の嫌悪じみた感情はなお私の心情内に残りました。じっさい、政権掌握前後のヒトラーは国民を前に演説する時はさかんにフランスを敵視する言葉を述べていましたし、群衆もそんなヒトラーを支持したのですから敗戦後のフランスがとったドイツに対する苛烈な姿勢をドイツ人は決して忘れてはいかなったのでしょう。
 しかしながら、それは第二次世界大戦後の世界を知っているからこそ感じられるものかもしれません。今が1922年だとした時、当然この先20年しないうちにドイツがまた戦争をするとか、ドイツを戦争に駆り立てた経済危機の根底にヴェルサイユ条約による賠償義務があったなんてことは想像もできないはずです。事実、欧州のまとめ役だったイギリスも、フランスさえもドイツがポーランドに侵攻するまで戦争など思いの外だったのですから。
 では20年代初頭のヨーロッパの指導者たちはどんな将来展望を抱いていたのかといえば、それはもちろん平和です。そしてその平和を体現するための装置こそが、軍国覇権主義ドイツを平和主義の民主国家に転身させるヴェルサイユ条約だったのです。本稿もこの「ヴェルサイユ条約のみが現状とりうる唯一にして最良の和平手段」という視点に立ち、その遂行への積極度という尺度で英仏を見ています。ヴェルサイユ条約の有効性が実際どうだったかは別にして、平和手段であった条約をドイツに遂行させる努力をしたかについて考えれば、フランスへの考え方もまた変わってくるでしょう。イギリスも同じく、視点が代わることで評価が変わってきます。第二次世界大戦後のアメリカを中心とした敗戦国処理を知り、あるいは体験し正義として拝んできた我々日本人にとってイギリスがイメージしていたドイツ帝国の戦後処理は、二次大戦の講和条約に近い性質をもつことから「正解」に近いものと感じられるかもしれません。実際アメリカが連合軍会議を脱退せず、フランスもすべての項目でイギリスに賛成していればあるいは第二次世界大戦は起きないか、ずっと先延ばしになっていたかもしれないです。しかしそれは未来からの視点であり、あくまで現時点で連合国が実行できる平和努力はヴェルサイユ条約だけで、イギリスがその遂行努力を自己都合で怠ったことは事実なのです。イギリスもフランスも、未来のヨーロッパというビジョンをそれぞれ持つと同時に自国の都合をそれぞれ抱えており、方向性の違いが遠心力を生み、どちらかの意見が通るのではなくあろうことが平行線を辿り、その果に満身創痍のドイツを野放しにしてしまったことこそが、この事件の顛末であり、その背景にはイギリスの楽観的かつ”非大陸的”視点が作用していたと本稿は語っています。

 といったところが本稿の要約ですが、私のような文盲が書き起こすと事実の羅列になってしまってあまり面白さが伝わらないですね。実際のところ、歴史的に重要な転換点について研究しているということ以上に、大戦をともに戦った連合国の双雄が平和になった途端にその意図を違えて両国関係に深い溝を築いてしまったという「皮肉な」事態を順に語っていることが本稿の面白さだと私は感じました。本稿に限った話ではありませんが、戦間期史は両大戦に挟まれたごく短い期間であることから「あらゆる事象の原因が第一次世界大戦にあり、結果が第二次世界大戦に繋がる」と言っていいほど戦争と関わりの深い平和の時代です。本稿も例外なく、文中で出てくる出来事・人物などはいずれもこの後に控える人類史上最大の戦禍に繋がるものであり、ただの会議や談話であっても異様な緊張感を放っており、それこそこのジャンルの魅力であり面白さだと私は信じて疑いません(悪い歴史マニアの視点)。



技術検討備忘録 画面のシャープネスと黒


 皆さんには十中八九どうでもいいことでしょうが、個人的にすっごく悩んでいた事柄について、袋小路を脱したので今後同じ問題で悩むことがないように備忘録をいれておきます。


 漫画には画面の見栄え、シャープさという曖昧な指標があります。何をどれだけすればいくらシャープ、とかそういう定量的な評価は無いのですが、ぱっと見の感覚として「白と黒(ベタ)の比率が多ければ、あるいはそれだけで構成」されていればシャープであり、逆に「中間色の比率が多い」と画面がボケて見えるというものです。鳥山明や冨樫義博や久保帯人といった少年ジャンプ作家のように全くあるいはほとんどトーン(中間色)を使わず白と黒だけで画面を作っている作家の原稿はスッキリして、シャープに角が立っていて見やすいと感じたことはないでしょうか。つまり主にああいうのを言うのですが、その実現手段が黒ベタという塗りつぶしの技術です。陰、頭髪、黒っぽい部分を全部黒で塗りつぶしたり、ハッチングで疑似中間色表現(トーンも広義ではこれにあたるがここでは別物とする)するのと組み合わせて色を代替表現するのが黒ベタです。
 自分は今まで原稿を作るなかで、どうも自分の原稿は印象がボケているなという感覚を拭えずにいました。自分は線画がかなり濃いほうではありますが、トーン張り(というより色彩指定)が全くの素人であるのでバランスを欠いているきらいがありました。備忘録なのでこの記事でわざわざ参照画像を呼び出したりするつもりはないので気になる人はページ脇のURLから飛んでほしいんですが、たぶん濃いトーンを使いすぎているのだと思います。その代替として、上記の黒ベタを習得できないかとずっと考えて、かつ実際に試みていた訳です。特に人体毛髪の表現ですね。漫画ですから基本的にどのコマにも人が出てきて、人の顔が写ってる訳で、髪を真っ黒で表現できれば画面の黒比率ノルマの難易度が一気に下がる訳です。
 私は実際に黒ベタで上手に毛髪表現をしている作家や絵かきの画像を色々参照しましたが、これが難しいんです。特に髪束と髪束が前後で複雑に交差したり絡み合ったりするような立体感のある髪型(私はよく描く)は反射光を書き込んだりして立体感を出すことで形状を表現し切るのはなかなかできなかったです。実際黒も黒真っ黒で描いてる人は輪郭の技巧で立体感を表現することのほうが多く、輪郭より内側に入った形状については表現しない例が大半でした。つまり、この技術は表現をある種制約しているのです。もちろんさらに技術が高ければ表現できるんでしょう(いわゆるレベルで殴れ)が、それよりもまず初心に帰って本棚を参照することにしました。今まで自分が読んできた漫画たちについて細かく見てみましたが、髪を黒ベタ表現しているという条件について絞って見てみると、やってない人のほうが多いです。でありながら、画面のバランスという点では全く遜色ないのです。陰やハッチング表現、あるいは太い主線で黒を補ってバランスを補っているのでした。ようは自分が「画面のバランス=毛髪の黒ベタ表現」と自己暗示をして袋小路に入っていただけだったのでした。
 線画、そう線画です。自分は線画の主線がもともとかなり太いほうで(意識してやっています)、でもちょっとやりすぎかなぁということで最近細くしていたので、その段でハッとしたのでした。結局自分が昔意図した方向からアプローチしていくのが最短経路だったんだなぁ、と。つまり主線を厚くして、さらに陰影も線画の領分で描いてしまえばそのぶん黒い色の工程が無くなるというような事です。あと、シャーペンそのまま画になってる背景もペン画に戻したほうがいいかもしれないですね。

 この後(具体的には今手を付けてる原稿を区切りまで描いたら)一回自分の作業を離れて、プロの作った漫画の原稿をそのままそっくり手書きコピーする練習法をやってみるつもりです。誰にしようかな。伊藤悠先生か胃之上奇嘉郎先生が良いかなぁ。


という備忘録でした。

プロフィール

複素数

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新都社で『伯方さんと僕』という漫画を連載しています。http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=12094
pixiv: http://www.pixiv.net/member.php?id=797664

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