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DOOM4 ストーリー類推


 先日DOOM(2016)を1年ぶりに遊びなおしました。このゲーム一部ではDOOM4と呼ばれたりDOOM(2016)と呼ばれててわかりづらいですが、DOOM4は製作途中で企画がキャンセルされた幻のアルファ版を指す場合もあるので、以下では正式名称に則ってDOOMと呼びます。シリーズの歴史とか作品の概要は各自調べてください。


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DOOM(steam)


 このDOOM、個人的には全方位でレベル高いコンテンツだと思うんですが、ネットで調べても「DOOM最新作、先祖返りでDOOM系(全方位から押しかけてくる敵を撃ちまくるゲームデザイン)に戻る」だの「頭空っぽにして銃を撃ちまくる爽快アクション」と言われたり、果ては「シリーズの伝統ですが(笑)ストーリー的な要素は皆無なので目の前の敵を倒していきましょう(笑笑)」などと書かれています。
 特に最後、これは最新作DOOMでは明確な勘違いで、ストーリーは用意されています。それもDead SpaceやCrysisといった同系シングルアクションゲームと肩を並べて追い越せるくらいには世界観から展開まで作り込まれているのですが、ストーリー展開がプレイ内容にコミットする割合を意図的に抑えて作られていることと、アクション性が強すぎて細かく見ている暇がないため普通にプレイしている限りではあまり重要ではないのがこのような論説の土壌になったのではと考えています。
 そういった背景もあり、日本語インターネット圏で検索しても本作に関するシングルプレイヤーのストーリーに関する考察はおろか解説すらろくに出てきません。本稿ではこの、光の差し込まない「アクションゲームのストーリー要素」について本編中の文献資料などを元に世界観などを確認していきたいと思います。



時代設定:

 劇中の年代は作中の記述から2145年(もしくはその数年後)と思われます。ハイデン博士の言によれば、この頃の地球は深刻なエネルギー危機の瀕しており、地獄の開拓とそれによって得られるエネルギーはその危険性を考慮しても不可欠であるとのこと。以下、コーデックスの記述を参考に年表を。

2095年:火星の地表でアージャントの裂け目(次元を超えて移動する、精製されていないアージャントプラズマの流れ)が発見される。
(注釈:アージャントUrgentとは差し迫った・緊急のという意味。プラズマは高エネルギー状態の物質が電離した状態で、アージャントプラズマは重金属の同位体元素ととれるような記述がなされています。また、アージャントエネルギーは一箇所に大量に集まるだけで大小の異次元ポータルを開いてしまう性質が示されていますので、この頃からデーモンとの遭遇はあった可能性があります:注釈おわり)

2096年:UACによりアージャントプラズマを採集・精製することでエネルギー源として利用することが計画され、それらの施設(アージャント施設)を建設・運用する人員が居住するための大規模な移住計画、それに伴う火星のテラフォーミングが始まる。年内には小規模なアージャント精製基地が完成している。

2130年前後:火星のテラフォーミングが完了(時期推定)

2145年:ラザロ計画有人調査によりカディンガー至聖所(注釈:至聖所とは宗教施設において最奥にある、最も神聖とされる部屋のこと。この場合は巨大な神殿群を指しており、ざっくりと聖地とかのほうが妥当かもしれない:注釈おわり)が調査され、大量の碑文・文献資料とともにドゥームマリーンと名付けられた人間が入った石棺とプラエトルスーツが回収される。ただしデーモンたちの激しい抵抗に遭ったことで調査隊はハイデン博士を除き全滅。

ゲーム開始直前:オリビア・ピアス博士と彼女の教団によって、ラザロ計画で火星に捕獲収容されていたデーモンたちが放たれ、UAC職員(総勢61000人強)は最高責任者のサミュエル・ハイデン博士とピアス博士を残して全滅する。デーモンたちは職員の遺体を使って「ゴアネスト(アージャントエネルギーに依存しない小さなポータル)」を作り、各所で無尽蔵にデーモンを呼び寄せていた。その頃、ラザロ計画によって火星に持ち帰られた後に行方不明になっていたドゥームマリーンの棺が開かれ(誰によって)主人公が目を覚ます。

ゲーム開始後:主人公ドゥームマリーンによって火星に展開したデーモンの多くは駆逐され、デーモン軍団の火星侵攻の地球側協力者だったピアスも死亡し、ポータルも完全に閉じる。さらに火星にあったアージャントプラズマ精製施設もドゥームマリーンの手によって完全に破壊され、人類が地獄に接触する手段は(当面の間は)絶たれる。詳細は遊んで確かめてほしい。



登場人物、用語:

・ドゥームマリーン(主人公)
 主人公。プレイヤーキャラクターでありプラエトルスーツというスパルタンのような未来チックアーマーに身を包んでデーモンを殺しまくる。人間であることが明示されているが、実は作中で一番重要な地獄の遺物。その正体はUACとハイデン博士によって行われた「ラザロ計画有人調査(おそらく2145年)」によって地獄から持ち帰られた石棺の中で眠っていた一人の人間であり、地獄の第一期に復讐に目覚め、デーモンたちを相手に殺戮の限りを尽くし恐れられたドゥームスレイヤー本人である。彼はデーモン(闇の軍団)とデーモンに関わるものすべてを憎悪しており、その怒りはハイデン博士の作り上げたヘルエネルギー(アージャントプラズマ)を回収するシステムにも向けられる。

・サミュエル=ハイデン博士
 火星でのUACの活動の責任者であり、アージャントの裂け目で発見されたプラズマ、もとい地獄を人類のエネルギー源として利用するという狂気を実現させてしまった男。アージャント施設で精製されたエネルギーを地球に送り届ける施設である「アージャントタワー」建設中に脳腫瘍で余命わずかであったことが発覚したが(この時点で100歳近い!)、数ヶ月で自分の脳の移転不能な部分を機械で置換し体も機械に置き換えることでサイボーグとして病を乗り越える。新しい体は身長3mを超える巨体で、主人公よりよっぽど強そう。ラザロ有人調査計画では十数人の完全武装した調査隊員が次々とデーモンの餌食になるなか彼一人だけ生きて帰還している。
 人類の存続には地獄の開拓とエネルギー採取が不可欠と考えており、ドゥームマリーンにアージャント施設を破壊された後も、主人公から地獄の遺物であるクルーシブルを奪って再起を図ろうとする。なおゲーム開始時で130数歳だそうで、逆算するとおおよそ本作発売時期(西暦2010年代なかごろ)に生まれたことになる。

・オリビア=ピアス博士
 本作の悪役。火星のUAC施設で研究用に捕獲されていたデーモンたちを解き放ち、アージャントタワーをポータルに変えてデーモンたちの火星侵攻を助けた。UAC研究者として火星に来る少し前からデーモン軍団の領主である闇の主に心をとらわれており、自らを永遠に生きる地獄の女帝にしてもらう対価としてデーモンの火星侵攻に協力した。が、闇の主が最も恐れるドゥームスレイヤーの復活は阻止できなかった。最期は契約の対価をデーモン流で受け取ることになり、ドゥームスレイヤーに倒された。

・VEGA
 AI。状況説明担当。特にこれといって役割はないが、まともな人間の出てこない本作の唯一の良心。後悔はたくさんあります。

・UAC
 作中の世界で最も影響力があると言われている企業。火星のアージャント施設運営を行っているほか、さらに遠くの惑星にも前進基地を持っているとの記述もある。コーデックスの記述のほか、アージャント施設の随所でみられるホログラムのプロパガンダ放送が徹底的な科学万能主義と人名軽視の企業体質を物語っている。ティア(職員の階級)が進むにつれ職員向けの資料に地獄に関する記述が増えていき、もはや科学ではなく闇の主の信奉者の集団でしかないことが描かれる(というかその案内文書を書いていたのがピアスだと最期に分かる)。誰が火星まできてこんな企業で働きたいと思うんだと思いそうなものだが、さわりだけ見れば最近の先進ベンチャー企業のような雰囲気である。



 地獄の考察:


・地獄
 本作がただの未来SFでおさまらなかった理由。火星の基地やテラフォーミングなどが登場する世界観において古典的な宗教観に基づく存在である地獄が「科学的に分析」されたうえ「エネルギー源として利用」されるという設定には目眩にも似た感動がある。
 ただし、本作における地獄は各宗教で言われるような悪人の行く場所ではなく、どちらかと言うと未知のエネルギーが循環している別次元の空間という感じである。とはいえどう見ても悪魔そのものの生物が跋扈し、人の絶えた遺跡や平原には人間の骸骨や血肉が山と転がっているビジュアルはどう見ても地獄であるから、作中登場人物も宗教的解釈の地獄として扱っている。
 本作の随所で語られるドゥームスレイヤーの前史や地獄の世界観などは、ゲームのストーリーに関わる内容であるにも関わらず”文献が断片的に引用されるだけ”の説明であり微妙に判然としない。ドキュメントをどっさり用意しても軽快なプレイを妨げるため絞れるだけ絞ったということなのだろう。以下ではゲーム内資料から分かる地獄での出来事をまとめる。

・アージャント=ドヌールをめぐる戦い
 本ゲームの最終ステージであるアージャント・ドヌールは、今は地獄の次元にある巨大な廃墟群だがかつては人間の暮らす街だったと記述されている。デーモンに制圧される以前のドヌールがどの次元に存在したかは劇中でも判然としないが、おおよそ古代地中海や古代イスラエルの都市国家のような形態のコミュニティだったのではないかと思われる。
 この街はデーモンの侵攻をうける以前から強力な闇魔術に関わるテクノロジーを保有しており、その源になっていたのが「エレメンタル・レイス」だった。レイスは強力なエネルギーを放ち続ける怪物(デーモンではない)であり、ドヌールの人々はレイスの恩恵を受けつつレイスを恐れ敬っていた。劇中に何度も幻影として登場する十字軍騎士のようなバケツヘルメットを被った戦士は、デーモンに滅ぼされる以前のドヌールをデーモンとレイスの両方から守護していた戦士司祭「ナイトセンチネル」である。というかナイトセンチネルのスーツも2140年代のテクノロジーとそう変わらないハイテクそうな外見をしているので、魔術とか関係なしにレイスのエネルギーを利用していただけかもしれない。冷酷無比のデーモン軍団をもってしても、レイスとレイスを守護するナイト・センチネルに守られたドヌールを制圧することは適わなかった。
 戦いのさなか、地獄の低位司祭ディーグ・グラブによってナイトセンチネルの一人と交渉がもたれる。戦闘中に行方不明になったセンチネルの息子の帰還と引き換えに、ドヌールを守るレイスのもとへとデーモンたちを案内するという契約だった。これによって難攻不落であったアージャント・ドヌールは陥落し、神殿は破壊されレイスはことごとくデーモンたちの手に渡った。この勝利でデーモンの得たものは大きく、レイスの放つ力を手中に納めたことで彼らの勢力は急伸することになる。また、アージャントの裂け目から漏れ出ていた未知のプラズマの正体もレイスの放つエネルギーであるとされています。
 大勢の仲間を裏切ったセンチネルは報酬として息子を受け取ったが、彼はデーモンの姿に変えられており、またセンチネル自身も裏切りの代償として苦しみを与えられた。(注釈:この辺記述が曖昧なのですが、おそらくピアス博士などと同じように悪魔に約束を反故にされたうえ、拷問でもされたのだと思われます:注釈おわり)

・ドゥームスレイヤーの戦いと封印
 アージャント・ドヌール陥落と同じ地獄の第一期に起こったドゥームスレイヤーによるデーモンとの戦いは、スレイヤーテスタメントとして地獄の各地に碑文が残されている。
 「地獄の炎で二度と這い上がれぬほど魂を汚された男」があるとき立ち上がり、デーモン軍団を殺戮しながら徐々に強くなっていき、徐々に悪魔を追い詰めていった。彼に倒されたデーモンたちは彼をドゥームスレイヤーと呼び恐れた。しかし、最期には地獄の司祭の計略によって神殿ごと封印されたというのがその内容である。
 この一連の戦いは上記のドヌールをめぐる戦いとの前後が明示されていないが、仮にアージャント・ドヌール陥落が先であった場合は「地獄の炎で二度と這い上がれぬほど魂を汚された男」というのがドヌール陥落の原因を作り、悪魔に裏切られたうえ苦しみを与えられたナイトセンチネルである可能性もある。裏切り者に関する記述は「裏切りの代償として苦しみを与えられた彼の報復は迅速かつ無慈悲だった」とあり、またドゥームスレイヤーは悪魔への復讐を始めた当初から「ナイトセンチネルの王冠」を被っていると書かれており、関連性が示されている。これが真実なら謎多きドゥームスレイヤーの経歴が明らかになる。

・タイタン
 スレイヤーテスタメントの碑文に突然登場する形態のよくわからない存在がタイタンである。記述には「しかし地の底から、かつて存在した強大な力を持つ戦士、偉大なる者が立ち上がった。凶暴なタイタンだ。彼は平原を進み、ドゥームスレイヤーと対峙し、荒れ果てた平原で熾烈な戦いを繰り広げた」とある。これに従えばタイタンとは個人名のことで、デーモンかどうかは分からないが地獄の側に立って戦っていることになる。
 一般に、タイタンといえばギリシア神話に登場する古の神ティターンとその子孫一党を指す。全知全能の神ゼウスが実父クロノスと天界の主導権を巡って戦ったティタノマキアでは多くのティターンがクロノスの側につき、敗北し地底深くのタルタロスに幽閉された。彼らは巨人族であり、大きな力を持っていたとされる。
 本作における地獄やデーモン、闇の軍団の取扱を考えれば上記のギリシア神話におけるティターンがそのまま登場しているとは考えにくいが、概ね似たような立場を背負っていると考えるべきである。
 作中には「タイタンの領域」という直球な名前のステージが登場する。このステージの解説には以下のように書かれている。「最期に、諸君が経験する不思議なことに向けて準備をしておくこと。タイタンの亡骸を見れば、勇敢な支持者でも恐怖をおぼえる。運が良ければ、生きたタイタンを見ることができるかもしれない。その場合、すぐに目撃した情報を記録し、安全のためにストレージ機器を偵察ボットに渡すこと。タイタンがまだグレートステップに生息しているかは判明していない(後略)」つまりタイタン族という種族(≠デーモン)が地獄の次元に存在しており、彼らはドヌールの住民のようにデーモンに滅ぼされたかあるいはドゥームスレイヤーに滅ぼされたか分からないが、おそらく絶滅しているだろうということが分かる。特に巨人という部分を強調して考えたい。地獄の領域であるネクロポリスやタイタンの領域に転がっている遺骨や遺体はドゥームスレイヤーと比較してもかなり大きい。その身長はおよそ3mで、敵キャラクターの一つで人造デーモンであるレヴェナントもそれくらいの身長であるのは偶然ではないかもしれない。コーデックスのレヴェナントの項目には、普通の人間にアージャントエネルギーを与え続けると骨格が急成長し3m程度で止まるとある。このあたりの設定についても関連があると思われるが、手元の情報ではこれ以上推察することは難しい。

・その他の遺体
 地獄の領域の大半はおぞましい屍肉や血の池、鎧を身にまとった骸骨が転がっている。プレイヤーが最初に訪れるカディンガー至聖所の神殿にも古戦場を思わせる遺骨群がそこらじゅうに積み上がっており、地獄の雰囲気を醸成している。これらはサイズは人間であり、また持っているのは盾や剣、鎖鎧であるから中世の戦士階級を連想させる遺留品である。あるものは矢で射抜かれ、あるものは剣で串刺しにされるなど思い思いの殺され方をしているが、彼らはどこから来た誰なのだろうか。剣や鎧の意匠は古代から中世(特に中世のヨーロッパ)のものだが、紋章などの由来を示すものはない。唯一目立つのはノルウェー国旗のようなスカンジナビア十字が書き込まれた盾だが、それもどこにでもあるといえばそれまでである。
 あるいは地獄の軍団の中心的場所であるカディンガー至聖所も、元をたどればアージャント・ドヌールのようにどこか別の次元から奪われた聖地なのかもしれない。


おおよそ疑問だったところについて情報を整理してみたが、続編(あると信じる)でもない限りこれ以上情報が出て来るとも思えないので、書くだけ書いて終わりです。


追記:日本語インターネット圏にぜんぜん情報がないのでどないや!と思って描きましたが、英語のwikiがありました…早く言え…
DOOM wiki
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コメント

No title

実際にゲームをプレイした身からすると、もやもやと何となく分かっていたところをスッパリ言語化してくれたので、すごい助かります! アクションもすごかったんですが、それ以上にバックボーンの物語・設定も凝ってあるのに、改めて気づかされました。
 またプレイしてみようと思います!

初めまして。なんとなくストーリーを解説するサイトを探していたらたどり着きました。
素晴らしいまとめに感謝です。
ただ1つ指摘させていただくと、ここでのアージェントはUrgentのほうではなくArgentになりますね。銀の、という意味ですが、銀の要素はあるのでしょうか(笑)

Re: タイトルなし

> 初めまして。なんとなくストーリーを解説するサイトを探していたらたどり着きました。
> 素晴らしいまとめに感謝です。
> ただ1つ指摘させていただくと、ここでのアージェントはUrgentのほうではなくArgentになりますね。銀の、という意味ですが、銀の要素はあるのでしょうか(笑)

長ったらしい私文を読んで頂きありがとうございます。最後に書きましたがぶっちゃけ英語wikiの内容とだいぶ食い違ってるのでご容赦頂きたい…。
アージャントの綴りについてですが、執筆中はおろかその後に至るまで全く気づきませんでした。銀の塔というとどことなく宗教的なニュアンスを連想するものですが、ご指摘頂き感謝します。
新生DOOMのストーリー面のモヤモヤを晴らすためにも、続編に期待したいところです!
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プロフィール

複素数

Author:複素数
名前:複素数
新都社で『伯方さんと僕』という漫画を連載しています。http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=12094
pixiv: http://www.pixiv.net/member.php?id=797664

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